ラヴェル：ツィガーヌ

ISR（International Standard Repertoires）は、全世界で最もスタンダードな管・弦楽器のレパートリー・シリーズです。

フランス語で「ジプシー」という意味のタイトルである《ツィガーヌ》は、大変技巧的で高度なテクニックが求められる演奏至難なラヴェルのヴァイオリン作品ですが、人気が高く広く愛好されています。ハンガリーの女流演奏家ジェリー・ダラーニの演奏を想定して彼女のために1924年に作曲されました。ハンガリーのチャルダッシュの形式によって書かれ、前半はラッサンに当たる非常に技巧的で自由な無伴奏の部分、また後半はハープまたはハンガリーの民族楽器ツィムバロンの演奏を思わせる波がうねるような形でピアノが登場して、フリスカに当たる大変速いテンポと目まぐるしい変化のある情熱的な音楽となっていきます。
このISRシリーズの楽譜は、フランスを拠点に活躍している若き優れたヴァイオリン奏者ヴァディム･チジクによって注意深く校訂されており、楽譜には運弓・運指を記して、演奏への助言を含めた楽曲解説も掲載しています。ピアノ伴奏譜は、チジク夫人のピアニストの船越清佳氏が校訂し、やはり演奏のヒントとして運指を付けています（デュラン版に元から記されている指はそのまま載せています）。